パラメトリック Illness-Death モデル
この方法を使用して、生存時間データを分析し、3 つの状態間の個人の移動をモデル化します。 XLSTAT ソフトウェアを使用して Excel で利用できます。

XLSTATでのパラメトリック Illness-Death(疾病-死亡)モデルの解説
マルチステート・モデルは,3 つ以上の状態を観察するときに使用されるillness-deathモデルは,マルチステート・モデルの ステートによる特殊例である : 初期状態(initial state),過渡状態(transient state),吸収状態( absorbing state),またはステート ,ステート ,ステート ともいう.
このモデルは,疾患の推移や死亡率を分析するために,医学的応用や研究でよく使用される.生保数理分野では,保険や生前給付支払契約のコストを計算するための多くの応用もある.
打ち切りおよび切り捨て
生存時間分析では,切り捨てと打ち切りは,データが不完全になる原因となる現象である.データを分析するときにそれらを無視すると,母集団パラメータの推定値に一貫性がなくなる.XLSTATのIllness-Deathモデルは,打ち切りと切り捨てが有益でないことを前提として,右打ち切り,区間打ち切り,左切り捨てが可能である.
打ち切りは,イベントの正確な時刻がわからない場合に発生するが,切り捨ては,イベント時刻が特定の値よりも小さいまたは大きい個人を観察しない場合に発生する.
- 右打ち切り : 観察の終りに個人が吸収状態に移行しない. t をイベント時間,tend を観察の終了時間とするなら,t > tend である.
- 区間打ち切り : 2つのオブザベーションの間に発生するイベント. tをイベント時間, tl と tl+1 を2つの連続する時間のオブザベーションとするなら, t ∈ [tl , tl+1] である.
- 左切り捨て : イベントがしきい値より下で発生しない.我々の事例では,調査の開始の前にイベントを発生させることはできない.
Levenberg-Marquardt アルゴリズム (LMA)
Levenberg-Marquardtアルゴリズム(LMA)は,対数尤度を最大化することにより,遷移強度と回帰パラメータを推定する.
LMAは2つの異なる手法の組み合わせである:
- Deepest Gradient (最深勾配): 対数尤度を最大化し,勾配方向に従って各繰り返しでパラメータを更新する.
- Newton-Raphson(ニュートン-ラプソン) : 各繰り返しで対数尤度導関数と更新されたパラメータを最大化する.
LMAは,最適化の間,これらの2つの手法を交互に使用する.LMAは,パラメータが解から遠いときに Deepest Gradient法のように振る舞い,パラメータが解に近いときにNewton-Raphson法のように振る舞う.これはLMAを(さまざまな収束問題に苦しむ)勾配法よりも速くして(計算コストが高い)ニュートン法よりも頑健にする.
備考 : LMAの効率性と頑健性にもかかわらず,, Illness-Deathモデルは複雑なモデルで,収束が補償されていない.収束の失敗は,オブザベーションの数の不足,または,たとえばある状態がデータセットに表現されていないなどのデータに起因する可能性がある.
予測 : 遷移確率と平均余命
予測は,2つの時間の間の遷移確率と平均余命を与える:
- 調査の開始時間
- 調査の終了時間
7個の遷移確率が計算される :
- p00 初期状態に留まる確率,
- p01 初期状態から過渡状態に移行する確率,
- p02 初期状態から吸収状態に移行する確率
- p11 過渡状態に留まる確率,
- p12 過渡状態から吸収状態に移行する確率..
3 個の平均余命が計算される :
- E00 状態 0 での平均余命(健康余命) : 個人が初期状態にあると仮定して,初期状態に留まることが期待される時間,
- E02 平均余命 : 個人が初期状態にあると仮定して,生存し続ける(吸収状態に移行しない)ことが期待される時間,
- E12 疾病余命 : 個人が過渡状態にあると仮定して,生存し続ける(吸収状態に移行しない)ことが期待される時間.
これらの確率と余命の数式は,Touraine C. (2013)で与えられた.
XLSTATでのパラメトリックIllness-Deathモデルの結果
XLSTATは,結果の分析と解釈を促進する多数の表やグラフを提供する.
記述統計 : 記述統計量の表は,状態インジケータおよび時間データの簡単な統計量を示す.時間データでは,オブザベーションの数,欠損値の数,非欠損値の数,平均および標準偏差(不偏)が表示される.状態インジケータについては,モダリティおよびそれらの数,およびそれらのパーセンテージが表示される.
Weibullパラメータ および 回帰係数 : これらの表は,Weibullパラメータおよび回帰係数を示す.Weibullパラメータは,ベースライン強度を計算するために使用される.モデルに共変量が含まれる場合,回帰係数の表が,各変数に関連する係数の推定値,標準偏差, χ2 -Wald,およびp値を提供する.そして,ハザード比(係数の指数)が関連する信頼区間とともに提供される.
遷移強度 : この表は,生存時間分析でのリスク関数のアナロジーである遷移強度を示す.遷移強度は,状態間の遷移のリスクを比較することを助ける.
遷移確率 : この表は,遷移確率を示す.これらの量は,状態間の遷移を比較することを助ける.遷移強度よりも直感的に,遷移確率はユーザーの解釈を助ける.
生存分布 : この表は,生存分布を示す.これらの量は,状態間の遷移を比較することを助ける.遷移強度よりも直感的に,生存分布はユーザーの解釈を助ける.
予測 : この表は,予測された遷移確率と3 個の平均余命を示す : 常識的に,疾病に留まる(過渡状態のまま)および健康に留まる(初期状態のまま).予測は,ユーザーが示す2 つの時間の間で計算される : 調査の開始時間と終了時間.共変量が予測に追加された場合,関連する共変量とともに,各個人について予測が行われる.それ以外は,結果は単一の個人に対応する.
XLSTATでのパラメトリック Illness-Deathモデルの事例
パラメトリック disease-death モデルの応用事例が弊社ヘルプセンターにある。
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