比率比較のための検出力

XLSTATでの比率比較のための統計的検出力分析
XLSTAT は,比率を検定するためのパラメトリック検定およびノン・パラメトリック検定を含んでいる.したがって,我々は, z-検定( 1 または 2比率),カイ2乗検定,符号検定, McNemar 検定を使用できる. XLSTAT は,これらの検定について,厳密手法または近似のいずれかを用いて,検出力または必要なオブザベーションの数の計算ができる.統計的検定を用いて仮説を検定する際,なすべき複数の決定がある:
- 帰無仮説 H0 および対立仮説 Ha .
- 使用する統計的検定.
- 第1種の過誤(type I error,アルファ過誤ともいう).帰無仮説を棄却したが,それが真である場合.これは各検定で事前に設定され,5%である.
第2種の過誤( type II error またはベータ過誤)は,あまり検討されないが,とても重要である.実は,これは帰無仮説が偽のときにそれを棄却しない確率を表している.我々はこれを前もって固定できないが,モデルの他のパラメータに基づいて,これを最小化しようとすることはできる.検定の検出力が1 - ベータとして計算され,帰無仮説が偽のときにそれを棄却する確率を表す.したがって,我々は検定の検出力を最大化したい.XLSTAT-Power モジュールは,他のパラメータが既知であるときの検出力(およびベータ)計算する.任意の検出力について,その検出力に達するために必要な標本サイズを計算することもできる.
統計的検出力の計算は,通常,実験を実施する前に行われる.検出力の計算の主な応用は,実験を適切に実施するために必要なオブザベーションを推定することである.XLSTAT は,次の比較ができる:
- ある比率と検定比率(さまざまな近似によるz-検定).
- 2つの比率(さまざまな近似によるz-検定).
- 分割表内の比率(カイ2乗検定).
- ノンパラメトリックな方法での比率(符号検定およびMcNemar 検定).
比率を比較する検定の検出力の計算
検定の検出力は,通常,関連する非心分布を用いて得られる.この場合では,我々は検出力を計算するために近似を用いる.
ある比率とテスト比率の比較
このケースの対立仮説は: Ha: p1 – p0 ≠ 0 さまざまな近似が可能である :
- 正規分布を用いた近似: この場合,我々は平均 p0と p1 および標準偏差 √ p0 (1- p0) / N と √p1 (1- p1) / N による正規分布を用いる.
- パラメータ √ p0 (1- p0) / N と √p1 (1- p1) / Nによる二項分布を用いた厳密計算.
- パラメータ ((N-1)p0 ; (N-1)(1-p0)) と ((N-1)p1 ; (N-1)(1-p1)) によるベータ分布を用いた近似.
- 逆正弦(arcsin )の手法を用いた近似: この近似は,比率の逆正弦変換 H(p0) と H(p1) に基づく. 検出力は正規分布Zp = √N( H(p0) - H(p1)) – Zreqを用いて得られる.ここで Zreq は正規分布のalpha-quantile である.
2比率の比較
この場合,対立仮説は: Ha: p1 – p2 ≠ 0 さまざまな近似が可能である:
- 逆正弦の手法を用いた近似: この近似は比率の逆正弦変換 H(p1) と H(p2)に基づく.検出力は,正規分布Zp = √N( H(p1) - H(p2)) – Zreqを用いて得らる.. ここで Zreq は正規分布の alpha-quantile である.
- 正規分布を用いた近似:この場合,我々は 平均 p1 と p2 および標準偏差√ p1 (1- p1) / N と √ p2 (1- p2) / N による 正規分布を用いる.
2 * 2分割表の場合のカイ2乗検定の検出力を計算するには,非心パラメータとしてカイ2乗の値による非心カイ2乗分布を使用する.したがって,2つのオブザベーションのグループがバイナリ変数に基づいて同じ振る舞いをするかどうかを確認しようとする.次表を使用する:
グループ 1 | グループ 2 | |
陽性 | p1 | p2 |
陰性 | 1-p1 | 1-p2 |
p1, N1 および N2 は,ダイアログ・ボックスで入力されなければならない(検定の自由度は1のみであるので,p2 は他のパラメータから見つかる).
符号検定
符号検定は,各グループ中のケースの比率が 50%に等しい場合かどうかを確認するために使用される.これは定数に対する1比率検定と同じ原理である.定数は 0.5である.検出力は,正規分布による近似または2項分布による厳密手法を用いて計算される.したがって,我々は標本サイズと1つのグループ p1 中の比率(その他の比率は p2=1-p1となる)を入力しなければならない.
McNemar 検定
対応のある比率でのMcNemar 検定は,定数に対する比率の検定の特殊ケースである.実際,以下の表によって問題を表現できる:
グループ 1 | グループ 2 | |
陽性 | PP | PN |
陰性 | P | NN |
PP + NN + PN + NP = 1となる.我々は,処理(処遇)の効果を確認しようとする;したがって,NP と PNに興味がある.その他の値は重要でない.
検定入力は:: 比率1= NP および比率 2 = PN.ただし, P1+P2
効果は,標本の NP + PN のパーセンテージでのみ計算される.陰性から陽性へ変化する個体の比率は,NP / (NP + NP)として計算される.そして,陽性から陰性になる個体が陰性から陽性になる個体より多いかどうかを確認するために,我々はこの数字を50%の値と比較しようとする.
この検定は,医療分野の応用に適しているだろう.
検出力を用いた標本サイズの計算
必要なオブザベーションの数を計算するには,XLSTATはある関数の根を探索するアルゴリズムを使用する.それはVan Wijngaarden-Dekker-Brent アルゴリズム(Brent, 1973)と呼ばれる.このアルゴリズムは,関数の導関数が未知の場合に適応する.それは,次式の根を見つけようとする:
検出力 (N) – 期待検出力
そして,検定ができるかぎり要求される検出力に近い検出力を持つようなサイズ N を得る.